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「円高為替政策と内需拡大」

1.円安による輸出増大で貿易黒字の再燃を懸念した米国の要請は日本の内需拡大であった。G7ではっきりと表明されている。

2.しかし財政構造改革を推進中の日本としては、金融政策が局限の超低金利で動きがとれない以上、内需拡大策は手詰りとあって円高為替政策で貿易黒字拡大を防止し、米国通商代表部の厳しい批判をかわす以外に道はなかった。いわば窮余の一策である。

3.大蔵大臣はじめ大蔵幹部の強引な口先介入が5月上旬行われた。4月下旬のベルリンG7での合意にも拘らず円安傾向は一向に収まらず、1ドル125〜6円を行きつ戻りつしていたからである。

4.「行き過ぎた円安には断固たる処置をとる」とした当局の口先介入は予想外の劇的反応があった。口先介入直後に1ドル120円を軽く突破、一時112円台迄円が急騰、その後ドルの買戻しで115〜6円に戻したものの、6月11日には一時110円台に突入、大蔵大臣が逆口先介入、つまり行き過ぎた円高には「断固処置する」と言明したことから114円台に戻している。

5.円高への過剰反応の背景は次の通り。
 (1)一応の目安だった1ドル125円を突破、127円台の円安で市場には目標達成感があった。
 (2)米国の物価・消費が安定しているため、金利引上懸念が遠のいた反面、日本の政界・労働界から金利引上要請が強まり、日米の金利格差縮小がはやされた。
 (3)バーシェフスキ米通商代表が日本の貿易黒字再拡大を非難する度に市場筋が円高攻勢。
 (4)政府筋に景気に対する楽観論が基本にある。

6.前記5の(2)は、日銀・大蔵の利上拒否姿勢から上りかけた長期金利は再低下、日米金利差縮小の思惑ははずれ、今後5の(3)と新たに欧州通貨不安からドイツマルク安懸念(逆にドル高に作用する可能性)が為替変動要因となるといわれているが、内外の識者は115円近辺が当面妥当な線とみている。当局の狙いも口先介入の上下限からみてその辺か。

7.問題は米国の執拗な「景気拡大」要請に対し為替政策オンリーで対応することが適切かどうかである。財政再建、超低金利維持を変えられないとすれば、その方策しか道はないといえようが、いかにも「権道」の感は免れない。前にも触れたが、その考え方の基本に景気楽観論がある。円高政策は明かに景気の足を引っぱる。円安で輸出増大・企業収益好転等景気に弾みがつくと目論んでいた日銀筋は急激な円高で渋い表情といわれる。日銀だけではあるまい。

8.景気動向については前述した通り楽観できる状況ではない。消費税引上による駆込需要の反動がどの程度か見極めがついていないし、特別減税打切・医療費引上と消費抑制に追打がかゝる。又住宅、公共投資の落込は必至といわれる。加えて1ドル110円台では一部大手優良会社を除き国際競争力の喪失が懸念される。楽観論には懐疑的にならざるを得ない。

9.強引な円高の危険な副作用を惧れる。
                                 ('97.6.15 輝)