「円安・株安・債券高」

1. 「債券高」を金利に置き換えれば「金利安」である。つまり円安・株安・金利安のトリプル安ということになる。

2. このトリプル安は景気先行不透明感に起因する同根症状といえる。

3. まず円安であるが、本年4月中・下旬ザラ場で1ドル127円台の安値をつけた段階で、大蔵幹部の強力な口先介入から6月中旬には一時1ドル110円台の円高となった。しかし110円台には逆口先介入から再び円安方向に振れ始めた。以降円安方向を決定付けたのは、日本の景気悪化を示す経済指標が相次いだこと、更には日銀が超低金利政策の継続を明らかにし、大蔵が円安容認姿勢(その背景に景気慎重論に変身)を示唆したことに依る。

4. 8月に入り日経平均株価は2万円の大台を割り、以後ジリ安を続け現在は1万8千円の大台をめぐる軟弱地合が続いている。ザラ場では再三1万8千円を割込んだ。NY市場が調整局面に入り半導体はじめハイテク株の大幅安を映し、日本でも買上げられていた国際優良株が連動して急落、頼みの外人買も売り越超、また中間決算期(9月)を控えた利益確定売が重なった。景気先行不透明感が根因。4〜6月のGDPの大幅落込及び日銀短観の業況悪化が追打。

5. 債券高は株安から運用資金が債券市場に流入、10年国債の指標銘柄の利回が2%を切るなど、高騰が続いている。長期金利が2%を切ったのは恐慌時代の米国に例があるだけ。景況悪化から金利引上思惑は後退。

6. トリプル安は同根の景気先行不透明感に起因するが、景気動向については前論に詳述した通り。概観すれば消費税引上前の駆込需要の反動が厳しく、個人消費持直しの時期が大方の予想に反し大きくズレ込み、且つ、その目途すら立たないのが現況。構造不況説も台頭。前年同期を下回るもの、(1)百貨店・スーパー売上、(2)パソコン販売、(3)エアコン販売、(4)ビール出荷量、(5)新設住宅着工戸数、(6)マンション契約率、(7)国内新車販売台数。うち落込が2桁のもの4件。

7. 景況感に回復の目途がつかない限り、トリプル安解消については、反転の契機が何か、またその時期が何時になるか覚束ない。

(1)円安については、仕掛人の米系ヘッジファンドが一段の円安を見込んでおり、英フィナンシャルタイムズ誌もディーラーは間もなく125円を予測していると報じた。しかし9月20日の香港G7を睨んで、米国財務省筋が、日本の黒字幅拡大懸念、輸出主導ではなく内需主導による景気拡大要請等牽制球を投げたため、円安は一時小休止。

(2)株安も調整局面を抜け切れない。ファンダメンタルズの悪化に加え米国株式の調整・混乱があり、またアジア株をはじめ世界的な株安も悪材料となっている。一方9月中間決算期を控え銀行等からの利益確定売が絶えない。3月末の日経平均18,003円をみれば当然の成行。

(3) 債券高は高値警戒論はあるものの、運用先の乏しいことから、特に国債に買が集中、低利回新発債の応札は大盛況。興長銀も長期プライムレートを過去最低の2.5%に引下げた。公定歩合引上観測は影をひそめた。

(97.9.30 輝)