<窓>「 株安・債券高・円高」
1..異常現象
株・債券・円は通常トリプル安とかトリプル高のように連動する場合が多いが、昨今のように背反するのは異常である。それぞれ屈折した事情が読みとれる。
(イ)日経平均株価は9月11日ザラ場でバブル崩壊後の最安値を更新、13,725円62銭をつけ、終値でも1万4千円を割込み、13,916円98銭となった。小渕内閣成立以降約15%の急落。
(ロ)指標銘柄10年物国債第182回債(表面利率3%)の利回は、9月11日0.790%と年率1%を大きく下回り、同じく小渕内閣成立当時の1.240%を0.450%も下回った。利回低下は債券の値上りを意味する。約2.8%の値上り(100円に対し111.52円→114.67円)。
(ハ)9月11日の円相場は一時1ドル128円80銭と急騰したが終値は130円76銭。小渕内閣成立当時の1ドル143円77銭に対して約9%の円高。
2..株安の原因……景況悪化と世界同時株安
株安の原因は国内事情としては景気の一段悪化(4〜6月GDPは前期比年率−3.3%と3期連続のマイナス、'98年度も2年連続のマイナス成長必至)及び世界事情としてロシアの経済危機による欧米をはじめとする世界同時株安が挙げられる(米ダウ平均は7月高値から約18%急落)。株急落の原因は分り易い。
3..債券高の原因……株安に伴う安全投資シフト
利回低下にも拘らず不安定な株式投資から安全な国債への逃避が原因とみられる。この現象は日本に限らずアメリカでも長短金利逆転現象を伴ない顕著に見られる。即ち、株下落傾向が始った8月以降指標銘柄30年物国債の利回は徐々に下り始め、ロシア危機が顕現化した8月21日には遂に5.43%と、フェデラルファンド(市場短期金利)の基準レート5.5%を下回り、長短金利が逆転した。NYダウの更なる急落で国債利回の下落は加速し、9月11日現在30年物が5.23%、10年物が4.83%と逆転現象は一段と進んでいる。なお10年物国債の日米金利差は依然約4%。
4.円高の原因……複雑多岐。確かなことは日本の経済状況に関係なく専ら外部事情によること。
日本の景気が一段と悪化している中、円高が急速に進んでいる現象は確かに理解に苦しむ。ロシアの経済危機とNYダウの急落による損失補填として投機筋の円買戻が主因で、米国経済減速懸念による一部ドル売りが絡んでいることも確かのようである。
(イ)ロシアは8月17日ルーブル切下を断行、更には国債償還を5年延期し事実上デフォルト(支払不能)に陥った。その影響は投資額の大きい欧米諸国、特にドイツに甚大といわれる。これを契機に世界同時株安が進行。
(ロ)ロシア経済危機はアメリカの投資額が大きい中南米にも波及、アメリカ経済や株式を揺ぶっている。新興工業国(エマージング・カントリー)への投資額の大きい米国のヘッジファンドが蒙った損失は巨額といわれる。有名なジョージ・ソロスもその例外ではない。そのヘッジファンドの損失補填は円操作だった。
(ハ)巨額の損失の穴埋めとして円買戻により円売りで儲けた分の利益確定をした訳である。加えて国内投資家も9月中間決算を控え利益確定のための円買戻を行っている。円は歪曲した形で高くなっただけである。
(98.9.11 輝)