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ジャーナリスト 宮 本 豊 子
(兵庫県立生活科学研究所常勤参与)

 
 “朝シャン”といえば、「ああ、一時、流行ったわね」と、言われるだろう。
 流行って、まことに気まぐれもの。その流行にかかわったがゆえに、大損をしたり、に、大もうけをしたりの企業や業者。“朝シャン”も一種の流行だったのかと、今になれば思う。そういえば、テレビにも、雑誌にも、新聞にもこの言葉は登場しなくなった。きっと、今の社会から立ち去ったのだろう。
 過日、化粧品・洗剤メーカーの技術者T氏から、こんな話を聞いた。「中途半端な、どっちつかずのモノづくりは、やっぱりダメですな」と。T氏は続けた。「朝シャンはバブル経済とともに花開き、崩壊とともに花はしぼんでしまいましたよ」。「へぇ、そうでしたか」と、私も少し驚きをもって耳を傾けた。
 T氏が言うには、「と同時に、商品の中には同じ道を辿ったものがありましてね。“カラーリンス”がそう、“リンス イン シャンプー”がそう」と、静かな面持で話し出した。
 バブルで花が咲いた二つの商品。経済状況の悪化で、売れゆきがぐんと落ちた。「結局は、どっちつかずの商品は弱いですね」と、企業人としての本音をはいた。
 二つの商品の共通点はといえば「便利性」。忙しい朝には、もってこいの品だった。カラーリンスは、洗髪しながら手軽に毛染めができる。一方のリンス イン シャンプーもリンスとシャンプーが一体型の便利商品。洗髪と仕上げが同時にできる一挙両得タイプ。「ゆっくり落着いて納得いくまで」が許されない忙しい朝には、重宝した品だった。
 ところが、消費者も勝手なものですね。流行期が去ったと察知するが早いか、見向きもしないで流行とともに去っていく。その素早しこさに消費者である私も目を見張るものがある。結果、メーカーは生産中止に追い込まれたり、細々と今も売り続けているメーカーもある。「当時は、こんな結末になろうなんて思ってもみませんでしたよ」と、過去を述懐するT氏。
 バブル経済のつけは目立たないまでも、こんなところにまでまわってきた。当時、話題を呼んだ朝シャンタオルはどうなったのやら。娘にねだられて新型の洗面台に取り替えた家庭も多かった。消えゆく商品は何といっても可愛相。つくる人の身になれば、私たち以上にさみしいことだろう。