IT革命と情報教育
神戸商科大学
情報処理教育センター 助教授
井 内 善 臣
1.はじめに
最近、「IT(情報通信)革命」の話題は、いろいろな機会に取り上げられてる。2000年7月に沖縄で開催されたサミットでも重要課題として討議された。また、マスコミ報道にもネットビジネスやITの関連記事は止まるところを知らない。「ドットコムショク」などという言葉もさかんに出てきた。インターネット上のオンライン書籍販売も「ドットコム」の代表的なビジネスで、AMAZON.
COMはその代表的なビジネス企業であるといえる。こうした仮想店舗に、新たなサービスが登場している。注文した商品を宅配便か近くのコンビニエンスストアで代金を払い受け取ることができる、駅のキオスクでも受け取りが可能など、新たなビジネス手法が人気を集めている。最近では、こうしたネットビジネスと従来のビジネス手法と組み合わせることにより、新しいビジネススタイルを生み出している。しかも、こうした新しいビジネスモデルは、特許としても認められるようになり、各国が競って特許の申請をしている。
ところで、最近出された「インターネット白書」によれば、ネット人口が2,000万人、世帯普及率が20%をついに超えたと報告されている。また、「通信白書平成12年度版」によれば、企業でのインターネットの普及率は89%となっている。ある人の説によれば、多くの場合、世帯普及率が12%〜15%に達すると、その後、雪崩現象的に普及が進むのだそうで、事実、ネットの世帯普及率は、1年前のデータでは13%(ネット人口は1500万人)であった。この1年間に7%アップしたことになり、さらにもう一年前の世帯普及率が7%であったことと併せて考えると、2001年までに、さらに大きく伸びることは容易に想像できる。しかも家庭からの利用者数が法人利用者数を抜いて増加しており、普及のすそ野の広がりを垣間見ることができる。しかし、それでも米国の半分程度にすぎない。インターネットをはじめとするITが企業だけでなく家庭や社会の中で果たす役割は少なくないといえよう。
こうした状況の中で、にわかにクローズアップされてきたのが「情報教育」あるいは広い意味で「人材の育成」である。おりしも教育改革国民会議(森首相の私的諮問機関)の中間報告が戦後教育の見直しに関する17項目の中間報告(平成12年9月22日)をまとめ、首相に提出した。この中には「IT教育の推進」が盛り込まれており、首相の所信表明演説(平成12年9月21日)でも「IT革命」と「教育改革」の2本柱が大きくクローズアップされており、日本型IT社会の実現に向け「E−ジャパン構想」を構築すると宣言をしている。
ここでは、IT革命には必要不可欠であるとして21世紀の重点課題として注目を集めている「ITと情報教育」について言及してみたい。
2. ITブームの背景
−情報を取り巻く環境の変革−
今日のITブームは、私的な印象ではあるが、先の阪神・淡路大震災で大いに活躍したインターネットが推進役であった、といっても過言ではない。文字情報だけでなく被災地からの映像や画像などリアルであふれんばかりの情報が「時差」なく世界中を駆けめぐったのは、とりわけ被災地に関わっておられた方には、記憶に新しいところでしょう。このITブームの背景にはどのような要素があったのか、ここでは、「技術の変革」、「社会の変革」の2つの面から概観してみよう。
2. 1 技術の変革
いうまでもなく今日のITブームの到来にはいくつかの技術的な変革が大きく関与しているといえる。それは、「ハードウェア技術」、「ソフトウェア技術」そして「通信に関連する技術」である。
(1)ハードウェア技術の変革
もっとも大きな要因は、半導体技術の進展である。その結果、@CPU(中央演算置)の高速化やAメモリの大容量化がここ2、3年で大きく進展し、パソコンの性能は日進月歩のごとく向上している。例えば、システムの処理速度の目安となるクロック周波数は、昨年には300MHz前後であったが、2000年には750MHz前後まで、単純には比較できないが、約2.5倍の速度となっている。このことによりBディジタル化やCマルチメディア化に拍車がかかることとなっている。
(2)ソフトウェア技術の変革
Windows98/95に代表されるGUI(Graphical User Interface)の機能向上によるところが大きいといえる。この機能のおかげで、初心者ユーザが、コンピュータ操作には専門的な知識が必要とされた「コマンド」から解放されたことは大きな意味がある。ハードウェアの技術進展による大容量化・高速化は、ソフト(プログラム)の高速化・容易化を促進したことはいうまでもない。このことにより、バーチャルリアリティ(仮想現実)やマルチメディア化が可能となった。また、暗号化や圧縮化の技術向上によってネットワーク処理での高速化・効率化が飛躍的に発展した。
(3)通信関連技術の変革
インターネット対応の携帯電話サービス「iモード」に代表されるモバイル技術は通信の新しいツールとして注目を集めている。iモードでは、携帯電話にインターネットの標準記述言語であるHTMLテキストが読めるブラウザを搭載し電子メールのやりとりやチケット予約、銀行振り込みなどを可能とした。また、通信環境の好転もITブームを押し上げる原動力になっている。従来から指摘されていることであるが、日本の電話料金をはじめとする通信料金はアメリカのそれに比べてはるかに高い。通信環境の好転のひとつは通信料金の低価格化があげられる。従来のアナログ公衆回線の定額制導入や新規参入各社の競争による価格競争によって低価格化が実現している。また、既存の電話回線を利用してISDN(Integrated
Services Digital Network)回線以上の高速データ通信を可能にする新しい通信方式であるXDSL(x
Digital Subscriber Line)あるいはその1方式であるADSL(Asymmetric
DSL)が開発された。すでにADSLはサービスが提供されており、今後の動向が注目されている。また、同軸ケーブルによるテレビ波送信システムであるケーブルテレビCATV(Cable
TeleVision)とケーブルモデムを利用して、パソコンをCATV回線経由でインターネットに接続するプロバイダーサービスも始まっている。このサービスが、全国的展開されているCATVに広がれば、各家庭からのインターネットの24時間接続も現実味を帯びてくる。
2. 2 社会の変革
IT革命のブームの背景には、個人のライフスタイルの大きな転換があるといえよう。そのキーワードとなっているのがSOHO(Small
Office Home Office)やテレワークである。SOHOは、情報通信インフラの整備がもっと進めばアメリカに追いつくと予想される。とりわけ、日本のような都市集中型では、地価の高い都心のオフィススペースは企業にとっては大きな負担となっている。各種のレポートでも都心のオフィススペースに空きが目立ち、供給過剰になっていることが報告されている。このような状況はSOHOやテレワークの導入が広がっていることの表れのひとつとみることもできる。
3. ITと情報教育
マルチメディア時代を迎えた今日、教育における情報化ならびに情報を活用した教育が必要とされ、情報通信ネットワークを積極的に活用する能力の育成が重要視されている。
とりわけ、情報教育の低年齢化とともに、情報化の進展が子供達への教育にも様々な影響を与えている。こうした情報化が一方では、ゲームソフトに熱中する子供達の人間不信や人間関係の希薄化などを引き起こし、社会問題化している。神戸での児童殺傷事件は、このひとつの出来事であるとも言われている。
中央教育審議会が出した「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(平成8年6月)」の中で、特に21世紀を担う子供たちが、情報化の進展の中で、「どのような教育が必要か」、「教育の改善・充実のためにコンピュータやネットワークをどのように生かしてゆくのか」の二点について
@情報リテラシーの基礎的な資質や能力の育成を計る
A情報機器やネットワークの環境を整備し、積極的な活用を計る
B学校自体を高度情報化通信社会に対応する「新しい学校」に進展させる
など、いくつかの提言を行っている。
その後、教育課程審議会が「教育課程の基準の改善」について、「審議のまとめ」(平成10年6月22日)やその後の「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、聾学校および養護学校の教育課程の基準の改善について」と題する「答申」(同年7月29日)、「小、中学校の学習指導要領」(同年12月14日)を相次いで公表した。また、高等学校の指導要領については平成11年3月29日に改訂が行われた。
それによると、各学校・段階を通じ、一貫した系統的な情報教育が行われるよう関係教科等の改善充実を図るよう提言されており、具体的には、小学校においては「総合的な学習の時間」をはじめ、様々な時間で、中学校においては、「技術・家庭科」で情報教育を行い、高等学校では普通教科「情報」を新設し必修とした。この新しい教育課程は小・中学校は平成14年度、高校は平成15年度からスタートすることになった。
また、今日、多くの大学では理系あるいは文系を問わず、コンピュータに対する基礎知識を持たない大多数の学生に、タイピングやマウスの基本操作から始め、文書処理、表計算ソフトによるデータ処理、インターネットをはじめとするコミュニケーションツール利用など、いわゆる「情報リテラシー」の入門教育が行われている。当然の成り行きであるが、大学における情報教育もこれまでのリテラシー入門教育から変わらざるを得ない状況になっている。
図表1 公立学校における情報インフラ整備の状況(平成12年3月31日現在)
|
学校数 |
コンピュータ |
コンピュータ |
インターネット |
|
|
コンピュータを操作できる教員数 |
コンピュータで指導できる教員数 |
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A |
C |
D |
E |
F |
G |
H |
L |
|
|
(B)人 |
(C/A) % |
(D/A)台 |
(E/A)% |
(F/A)% |
(G/A)種 |
(H/B)人 |
(L/B)人 |
|
|
小学校 |
23,607 |
23,344 |
367,292 |
11,507 |
3,550 |
797,469 |
249,381 |
144,396 |
|
(395,958) |
(98.9) |
(15.7) |
(48.7) |
(30.9) |
(34.2) |
(63.0) |
(36.5) |
|
|
中学校 |
10,418 |
10,418 |
382,981 |
7,068 |
2,045 |
540,454 |
157,670 |
69,642 |
|
(234,636) |
(100.0) |
(36.8) |
(67.8) |
(28.9) |
(51.9) |
(67.2) |
(29.7) |
|
|
高等学校 |
4,146 |
4,146 |
339,489 |
3,320 |
1,975 |
150,358 |
149,764 |
57,074 |
|
(202,796) |
(100.0) |
(81.9) |
(80.1) |
(59.5) |
(36.3) |
(73.8) |
(28.1) |
|
|
特殊教育学校 |
925 |
921 |
14,100 |
554 |
280 |
35,458 |
28,939 |
10,926 |
|
(53,378) |
(99.6) |
(15.3) |
(59.9) |
(50.5) |
(38.5) |
(54.2) |
(20.5) |
|
|
合計 |
39,096 |
38,829 |
1,103,862 |
22,449 |
7,850 |
1,523,739 |
585,754 |
282,038 |
|
(886,768) |
(99.3) |
(28.4) |
(57.4) |
(35.0) |
(39.2) |
(66.1) |
(31.8) |
「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」(文部省)より作成
図表2 コンピュータおよびインターネット整備に関する日米カナダの比較(平成11年10月調査時点)
|
項目 |
日 本 (注1) |
米 国 |
カ ナ ダ |
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|
コ ン ピ ュ ー タ 整 備 に 関 す る 比 較 |
活用の目標 |
情報教育(情報活用能力の育成) |
テクノロジー・リテラシー学習指導の向上 |
アルバータ州では,目標を具体的に示している. |
|
|
設置率 |
99.3% |
ほとんど100% |
|
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|
98.9 小学校 |
|
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|
100.0 中学校 |
|
||||
|
100.0 高等学校 |
|
||||
|
学校当たりの 台数 |
28.4台/校 |
小中 93台/校 |
|
||
|
15.7 小学校 |
|
||||
|
36.8 中学校 |
|
||||
|
81.9 高等学校 |
|
||||
|
1台当たりの 生徒数 |
15.3人/台(注2) |
5.7人/台 |
7人/台 |
||
|
25.3 小学校 |
マルチメディア型 9.8 |
9 小学校 |
|||
|
12.3 中学校 |
|
8 中学校 |
|||
|
9.4 高等学校 |
|
7 高等学校 |
|||
|
設置場所 |
10.3 % 普通教室 |
49.7 % 普通教室 |
|
||
|
82.2 % コンピュータ室 |
41.1 % コンピュータ室 |
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|
18.8 % 特別室 |
7.6 % 図書室 |
||||
|
22.2 % 図書室 |
|
||||
|
80.1 % 職員室 |
|
||||
|
計画(目標) |
平成11年度1台に 15.5人 |
1999年 |
1999年 |
||
|
平成17年度1台に 5.4 |
生徒4〜5人に1台のマルチメディア対応のコンピュータ |
アルバータ州では約5人に1台 |
|
||
|
|
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|
イ ン タ ー ネ ッ ト 整 備 に 関 る 比 較 |
接続率 |
57.4% |
89% |
1999年3月までに全学校を接続
|
|
|
48.7 小学校 |
88 小学校 |
||||
|
67.8 中学校 |
94 中学校 |
||||
|
80.1 高等学校 |
95 大規模校 |
||||
|
教室への接続率 |
|
全教室の67% |
|
||
|
接続コンピュータ1台当たりの生徒数 |
|
13.6人/台 |
|
|
|
|
|
|||||
|
速度(目標) |
ISDN(128kbps) |
T1ライン(1.5Mbps) |
|
||
|
速度(現在) 計画(目標) |
|
49% T1ライン |
カルガリー市では10Mbps以上(100Mbpsの学校もある) |
||
|
23% 標準モデム |
|||||
|
12% 56kbps回線 |
|||||
|
7% ISDN |
|||||
|
2% その他 |
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|
2001年までに全ての学校 |
2000年までに全ての教室 |
2001年3月までに教室を接続 |
|||
|
2005年までに高速化 |
12歳以上の全ての生徒 |
||||
|
補助金 |
地方交付税措置 |
E-rate(1998年から) |
|
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1998年(17億円/年) |
20〜90%割引 |
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|
1999年(26億円/年) |
22.5億ドル/年(注3) |
||||
|
2000年(40億円/年) |
対象 インターネット接続 |
||||
|
2001年(54億円/年) |
インストール |
||||
|
|
ファイルサーバ |
||||
|
対象 プロバイダ経費 |
通信料(プロバイダ) |
||||
|
通信料 |
電子メール管理 |
||||
|
|
無線LAN |
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出典 第9回海外調査「アメリカ・カナダ教育事情視察団報告書」
社団法人日本教育工学振興会 平成12年3月
(注1)日本に関するデータは「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」(文部省 平成12年3月)より作成(注2)平成11年3月31日現在
(注3)初年度(1998.1〜1999.6の18ヶ月間)は約17億ドル
3. 1学校情報化の現状
政府等のかけ声とは裏腹に教育現場の情報化の現状は寒いものと言わざるを得ない。小・中・高ならびに特殊教育学校をあわせた全体の割合でみるとコンピュータの設置率は99.3%とほぼ、すべての学校に(1台は)設置されていることになるが、1校あたりのコンピュータ設置台数は28.4台にすぎない。1クラスが42人であるとすると、1クラス(教室)一斉授業に必要な台数(一人1台)をも満たしていないことになる。もっともコンピュータの設置場所は、アメリカでは普通教室で49.7%の設置率であるのに対して、日本では職員室が80.1%で、普通教室は9%にしかすぎない。
また、インターネット接続について、全体では57.4%とほぼ2校に1校の割合で接続されているが、ISDNによる接続が主で、通信速度、通信品質とも必ずしも満足を得るものではない。アメリカやカナダではインターネットへの接続率がほぼ、100%であるのに対して、日本では例えば、小学校では約半数であり、通信速度も1.5Mbpsに対して128kbpsである。日米の通信事情を反映する象徴的な差異であるといえる。
このような状況の下、「すべての教室からインターネットにアクセス」、「すべての教室にコンピュータを整備」、「すべての教員がコンピュータを操作」、「あらゆる授業においてコンピュータ等をフル活用」を具体的な目標に、ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)の一つとして「教育の情報化」が設けられ、平成17年度を目標として教育の情報化の施策が具体的に推進されることとなった。
具体的には
@公立学校のコンピュータ整備・インターネット接続
A校内LANの整備
B教員研修の実施
C学校教育用コンテンツの開発
D教育情報ナショナルセンター機能の整備(教育用ポータルサイトの開設に係る研究開発)
である。
3. 2 小・中学校での情報教育
新指導要領には具体的な学習目標としてどのようなことが掲げられているのか、指導要領そのものやその解説書をチェックしてみる。
(1)小学校での「総合的な学習」
小学校での「総合的な学習」のねらいとして
@課題発見・解決能力の育成
A主体的・能動的な学習態度の育成
B情報収集・整理・発信能力の育成
C総合化された知識・技能の育成
D自己の生き方の自覚をうながす
があげられている。
たとえば、子どもたちが学習を行う際にディジタルカメラで画像を撮って発信するためにまとめる。こうした学習のまとめをWebページ化してインターネットで情報発信する。反対に、Webページに寄せられた意見や感想、交流学習で得られた論点などを見直し学習を振り返ることができる。また、テレビ会議システムを利用して実際に行けない地域の子どもたちとリアルタイムで話をしたり、専門家から情報を得ることができる。このようにして、総合的な学習の時間を通じて子どもたちの個性をのばす総合的学習が可能となる。
(2)中学校での情報教育
中学校では「総合的な学習の時間」だけでなく各教科での学習や選択教科での学習においても、資料収集やメディア利用など、主にインターネットを活用した学習を行うとしている。また、中学校の技術・家庭科で選択領域であった「情報とコンピュータ」が必修となり、情報活用能力を育成する観点から、コンピュータの活用に必要な基礎的・基本的な内容を実践的・体験的な学習を行う。具体的な内容は、
すべての生徒に共通に履修させる基礎的・基本的な内容である
@生活や産業の中で情報手段が果たしている役割
Aコンピュータの基本的な構成と機能及び操作
Bコンピュータの利用
C情報通信ネットワーク
の4項目と、
生徒の興味・関心に応じて選択的に履修させる発展的な内容である
Dコンピュータを利用したマルチメディアの活用
Eプログラムの計測・制御
の2項目で構成されている。
コンピュータの基礎的・基本的な構成や操作などの実践的・体験的な学習活動を通じて、情報手段の果たしている役割を理解し、情報の収集、判断、処理、発信ができるようにするとともに、自ら課題をもって解決する能力と生活に生かす態度を育成することをねらいとする、としている。
学習指導要領解説にはさらに詳しく記載されている。
@生活や産業の中で情報手段が果たしている役割
図書館における蔵書管理システム、POSシステム、銀行のオンラインシステム、電車の自動運行システムなど、情報機器や情報通信ネットワークが生活や産業の中でどのように発達し、生活をどう変化させてきたのかを簡単に知らせる。また、これらの特徴を知り、効果的に活用し生活に取り入れていくための方法について考えさせる。
また、個人情報や著作権の保護、コンピュータ犯罪、健康問題なども含めて情報化が社会や生活に及ぼす光と陰の存在および情報モラルについて考えさせる。
Aコンピュータの基本的な構成と機能及び操作
コンピュータ本体については、CPUやROM/RAMなどの働きについて簡単に知らせる程度とし、コンピュータがディジタル信号でデータ処理していることを知らせる。また、データの記憶や保存についてはフロッピーディスク装置、固定磁気ディスク(HD)装置あるいは光磁気ディスク装置(MO)等の補助記憶装置で行われることを簡単に知らせ、必要な情報やデータの保存ができるようにする。
さらに、コンピュータの基本的な動作のために必要なオペレーティングシステム(OS)などの基本ソフトウェアや電子メール、文書作成、表計算などアプリケーションソフトウェアなどがあることを知らせる。
Bコンピュータの利用
パソコンの利用形態として文書処理、データベース処理、表計算処理、図形処理などアプリケーションソフトウェアの特徴と利用方法を知らせるとともに、一般的に使用されているアプリケーションソフトウェアを選択し情報が処理できるようにする。
また、アプリケーションソフトウェアを用いて、生徒自身が身の回りにある情報を処理できるようにする。さらに、データの種類や特徴を表にまとめたりグループ討議をしたりして分析し、その結果を相互に評価しあう学習展開を通して、情報に対して総合的に価値判断ができるようにする。
C情報通信ネットワーク
手紙、電話、コンピュータなどを例に、伝達の方向性、伝達の対象、情報手段に求められる有効な利用方法について考えさせ、コンピュータを利用した情報通信ネットワークの持つ高速性、正確性、機密性などを知らせることが考えられる。とりわけ、インターネットなどコンピュータを利用した情報通信ネットワークの利用方法について、生徒一人一人が主体的に問題を発見する学習活動を設定し、その問題を解決する過程を通して、必要な情報を収集、判断、処理し発信することなどをインターネット等を利用し、電子メールを利用して疑問点や意見の交換を行う体験をさせる。
Dコンピュータを利用したマルチメディアの活用
コンピュータを利用することによって、動画、静止画、音楽、音声、文書など多様なメディアの素材をディジタルデータとして取り扱い、各種のデータを複合して一元的に活用する操作が可能になることを知らせる。また、多様な素材を用い、例えばWebページやプレゼンテーション用資料の作成を通して、情報を収集、判断、処理するなどの学習を行う。
Eプログラムの計測・制御
「順次」、「反復」、「分岐」などの基本的な情報処理の手順を理解させると同時に、プログラムの呼び出し方、プログラムリストの見方、プログラムの実行の仕方、デバッグの仕方などを学び、基本的な操作ができるようにする。なお、プログラムの学習においては、命令語を覚えることよりも、目的に応じたプログラムの手順を考えることに重点を置き、作成するプログラムとしては、生徒の関心や興味に応じたものや計測・制御を目的とするものを取り扱う。また、身の回りにある機器の中にはコンピュータによって環境の状態を計測し、機器の動きを制御しているものが多くあることを学ぶ。その際、具体的な制御プログラムから、一連の情報がプログラムによって処理されていることを知り、計測・制御システムとプログラムの関連について理解を深める。
3. 3高等学校での情報教育

高等学校での情報教育は小・中学校の学習を基礎に行うこととなっている。図表3「情報教育の体系化(イメージ)」からもわかるように、「総合的な学習の時間」や「各教科での活用」を通して情報活用の実践力を培うのは同じである。今までと大きく異なるのは、普通教科「情報」が必須科目として新設されたことである。この教科のねらいは、「情報活用の実践力」を深化・定着させるとともに「情報の科学的な理解」と社会生活の中で情報モラルの必要性や責任について考え、望ましい「情報社会に参画する態度」を育成することである。すなわち、身のまわりの問題などを実際に情報機器を活用して効果的に解決したり、収集した事例を用いて情報社会についての認識を深めたりする活動を通して、情報社会の一員として大量の情報に押し流されることなく、適正な活動が行えるような能力と態度を育成するための教科である、としている。先の「情報活用の実践力」、「情報の科学的な理解」、「情報社会に参画する態度」の3つの観点から体系的に捉え、バランスよく学習を行うことが重要である。
(1)科目編成
普通教科「情報」では、「情報A」、「情報B」、「情報C」の3科目で構成され、いずれも標準単位数は2単位(70時間/年)であり、いずれか1科目を選択して履修することになっている。これらの科目は先の3つの観点とおおむね一致している。すなわち「情報活用の実践力」は「情報A」、「情報の科学的な理解」は「情報B」、「情報社会に参画する態度」は「情報C」にそれぞれ対応している。各科目の内容は次のような性格の違いを持っている。
@「情報A」
この科目は、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報機器を活用する実習を多く取り入れる。それらの活動を通して基本的な技能の育成をはかり、「情報活用の実践力」を高める。「情報A」はコンピュータや情報通信ネットワークなどの活用経験が浅い生徒でも十分履修できることを想定している。
A「情報B」
この科目は、コンピュータの機能や仕組みだけでなく、コンピュータを効果的に活用するための考え方や方法を習得させ、「情報の科学的な理解」を深めていく。同時に情報技術が社会の様々な分野で応用されていることを理解させ、情報社会を支える技術の在り方について考えさせることを通して「情報社会に参画する態度」を育てる。「情報B」は、コンピュータに興味・関心を持つ生徒が履修することを想定している。
B「情報C」
この科目は、情報の表現方法やコミュニケーションについての学習、実際の調査活動、情報社会の理解を通して「情報活用の実践力」を高めるとともに「情報社会に参画する態度」の育成を重視する。これらの活動に関連させて、情報機器や情報通信ネットワークの仕組みや特性などの「情報の科学的な理解」をもあわせて育成する。「情報C」は情報社会やコミュニケーションに興味・関心を持つ生徒が履修することを想定している。
学習指導要領には、「情報活用の実践力」について、「情報A」では総授業時数の2分の1以上、「情報B」および「情報C」では総授業時数の3分の1以上を実習に配当するよう指示されている。すなわち、「情報A」は「情報B」および「情報C」よりも実践力の育成に重点を置いた科目になっている。
図表4 情報A,情報B,情報Cの内容の比較
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情報A |
情報B |
情報C |
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中学校での学習状況 |
中学校でコンピュータの操作を十分にやってこなかった生徒 |
中学校で情報機器の操作を身につけた生徒 |
中学校で情報機器の操作を身につけた生徒 |
|
高等学校での学習目標 |
情報活用についてこれから伸ばしていかなければならない生徒用 |
高校でコンピュータの仕組みや科学に興味を持っている生徒用 |
高校で情報社会に興味があり,コミュニケーションを利用したいという生徒用 |
|
対象 |
文系・理系共通 |
理系向き |
文系向け |
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具体的内容 |
1.旅行など身近な題材についてインターネットや表計算ソフトを活用して計画を立てる |
1.旅行計画など身近な題材を表計算ソフトで処理 |
1.身の回りの情報機器とその特性を学ぶ |
|
実習 |
総授業時間数の1/2以上 |
総授業時間数の1/3以上 |
総授業時間数の1/3以上 |
(2)情報モラル
情報化の進展化にともない「影」の部分が顕在化している。情報化の「影」の部分に対する正確な知識と対処法について学習することは、現代社会では必要不可欠である。この情報モラルを普通教科「情報」では「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」と捉えることとしている。実習をはじめとする学習活動の中には、情報モラルの育成につながる材料が含まれている。指導者自身が常に情報モラルについて意識することにより、学習活動の中で適切に指導する必要がある。
例えば
@情報収集においては適切な手続きによる情報の収集、著作権などの尊重、情報の信頼性についての意識
A情報発信においては、プライバシーの保護、著作権などの尊重、情報発信に伴う責任
Bコミュニケーションにおいては、エチケット、相手への配慮
C情報通信ネットワーク利用においてはガイドラインの遵守、セキュリティへの配慮
D制作活動においては著作権などの尊重
を十分に考慮する必要がある。
4. おわりに
情報教育はITブームに乗って大きな転換期を迎えたと言える。教育現場にコンピュータやインターネットが整備され導入されることは喜ばしいことであるが、導入後の管理や運営を誰が行うのか。すでに、教師は教育、クラブ活動、生活指導と大きな負担となっており、さらに、運営・管理を行うのは困難であると言わざるを得ない。そのための知識やノウハウも十分とは言えない。また、ITによる情報化は、新たなディジタルデバイド(情報格差)を引き起こすことも予想され、これに対してどのようにフォローしてゆくのか、そもそも例えば、高等学校での情報A、B、Cのどれを採択すればいいのか、中学校までの段階で指導要領にかかれている内容が十分に学習できているのか、課題は数多くある。英語や数学などのように具体的な内容に踏み込んで指導要領に記載されている教科内容と異なり、「情報」は、実際には、どのレベルまで教育を行えばよいのか、具体的な内容は見えない。それだけ教育現場での混乱も多く、したがって、大学に入学してきた学生にはレベル差があると容易に想像できる。
こうした課題は他にも、例えば、
@小・中・高校で本当に一貫教育ができるのか
Aネットワークでのエチケット(ネチケット)など情報モラルを適切に教えられるのか
Bインターネットなどにみられる有害情報をどのように排除するのか
C副教材、資料などコンテンツの開発をどうするのか
D全国で二万あるいは三万人必要ともいわれている情報教育担当者の養成をどうするのか
など、いくつもあげることができる。
こうした課題を解決するための特効薬はないと思うが、例えば、父兄や卒業生など地域に数多くいる豊富な人材を活用して、学校だけでなく地域全体で、また、情報教育だけでなくあらゆる教育において、教育を行う必要があろう。
そのためには、ネットデイなどにみられるように、NPOや父兄・住民など地域一丸となった取り組みが必要である。
参考文献(主なもの)
1.「インターネット利用のガイドライン」平成10年3月 兵庫県立教育研修所
(http://www.hyogo-edu.yashiro.hyogo.jp/kenshusho)
2.「高等学校学習指導要領」平成11年3月 大蔵省印刷局
3.「中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−技術・家庭編−」平成11年9月 文部省 東京書籍
4.「高等学校学習指導要領解説 情報編」平成12年3月 文部省 開隆堂出版
5.「第9回海外調査 アメリカ・カナダ教育事情視察団報告書」平成12年3月 社団法人日本教育工学振興会
6.「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」平成12年3月 文部省
7.「じっきょう 情報教育資料」No.1 平成12年8月 実教出版