神戸の外国人学校


神戸市国際部長
楠 本 利 夫

はじめに
 1868年1月1日(慶応3年12月7日)、神戸開港とともに、神戸に外国人居留地が設置され、それまで人口2万5千人の寒村であった神戸が、わが国の世界への窓口となることになった。神戸開港の翌年には、スエズ運河が開通しヨーロッパとアジアの交通が飛躍的に便利になり、神戸に世界中から、ひと、もの、情報、文化が流れ込んできた。
 神戸港と、外国人居留地が、神戸の町に国際的雰囲気と進取の気風を育み、神戸独特の文化を育てた。外交官、貿易商、文化人、新聞記者など神戸に住みついた外国人は、神戸に欧米風ライフスタイル、文化、建築、産業などを持ち込んだ。
 神戸開港の年、1868(明治元)年8月、はやくも華僑10数人が、長崎、横浜から来神、ランプ用石油などを持ち込んだ。(注)
 中国人は、居留地の欧米人の通訳、買弁などとして神戸に移り住んだが、彼らの母国である清国が条約国でなかったため、居留地に住むことが許されず、やむなく、居留地から道路を隔てた西側に住みつき、そこが、「南京町」の原点となった。
 神戸に住んだ外国人は、自分達の子弟教育のために、彼ら独自の外国人学校を作った。こんにち神戸に9校ある外国人学校は、教会、外国人クラブ、外国人向け病院などとともに、神戸に住む外国人にとり、なくてはならない施設、いわば「生活インフラ」とも言うべき施設であり、これらの施設は、山と海という恵まれた自然環境、美しい景観とともに、神戸を外国人にも住みやすい町とし、外資系企業誘致を進める神戸市の政策に、側面から貢献している。(注)神戸新聞社編「素顔の華橋〜逆境に耐える力」1987年6月

1.政令指定都市の外国人学校
 外国人学校は都市の国際性を示すひとつの指標であるといえる。神戸は、政令指定都市の中で、外国人学校が最も多い都市のひとつである。
 指定都市の外国人学校は、大阪市10校、神戸市9校、横浜市8校、京都市7校、名古屋市3校、札幌市、仙台市、広島市、北九州市が各2校、千葉市、福岡市が各1校となっている。
 各都市の外国人学校は、朝鮮学校が群を抜いて多く、大阪市では外国人学校10校のうち8校が朝鮮学校、神戸市は9校のうち3校、横浜市8校のうち3校、京都市7校のうち4校、名古屋市3校のうち1校、札幌市、仙台市、広島市は、各2校のうちそれぞれ1校、北九州市2校、千葉市、福岡市各1校が朝鮮学校となっている。
 朝鮮学校以外の外国人学校は、神戸市6校、横浜市5校、京都市3校、大阪市2校、札幌市、仙台市、名古屋市、広島市各1校である。

(表1)政令指定都市の外国人学校数2001121日現在)

都市名

外国人学校数

 

朝鮮学校

韓国学校

中華学校

欧米系学校

神戸市

 

札幌市

   

仙台市

   

千葉市

     

横浜市

 

川崎市

     

名古屋市

 

京都市

 

大阪市

10

 

広島市

   

北九州市

     

福岡市

     

(神戸市国際課調べ)

 (欧米系学校の名称)
神戸市:カネディアン・アカデミイ、マリスト国際学校、聖ミカエル国際学校、ルーテル国際学園・ノルウエー学校、神戸ドイツ学院
札幌市:北海道インターナショナルスクール
仙台市:東北インターナショナルスクール
横浜市:サンモール・インターナショナルスクール、横浜インターナショナルスクール、東京横浜ドイツ学園
名古屋市:名古屋国際学校
京都市:京都インターナショナルスクール、関西フランス学院
大阪市:大阪YMCAインターナショナルスクール
広島市:広島インターナショナルスクール
 
2.神戸市内の外国人学校
(1) 神戸市内外国人学校
 神戸市内には、外国人学校が9校(7法人)ある。カネディアン・アカデミイ、神戸中華同文学校、神戸ドイツ学院、聖ミカエル国際学校、マリスト国際学校、ルーテル国際学校・ノルウエー学校、神戸朝鮮初級学校、西神戸朝鮮初中級学校、神戸朝鮮高級学校である。
 また、補習校として「神戸フランス学校」が、神戸市立御影小学校の教室を借りて、週1回午後フランス人子弟等のための補習教育を実施している。
 ちなみに、兵庫県下の外国人学校は、神戸市内の外国人学校9校に加えて、朝鮮学校7校(尼崎初中級、尼崎東初級、西播磨初中級、明石初中級、西脇初級、伊丹初級、宝塚初級)の計16校(7法人)である。
 神戸の外国人学校の歴史は古い。
 もっとも長い歴史を持つ神戸中華同文学校(1899年設立)は102年、ついで、神戸ドイツ学院(1909年)が92年、カネディアン・アカデミイ(1913年設立)が88年であり、戦後設立の外国人学校は、神戸朝鮮初級学校(1945年)、西神戸朝鮮初級学校(1945年)、神戸朝鮮高級学校(1945年)、聖ミカエル国際学校(1946年)、ルーテル国際学校・ノルウエー学校(1949年)、マリスト国際学校(1951年)である。
 神戸外国クラブ会長のフリッツ・レオンハルト氏は、神戸生まれ神戸育ち。氏とご夫人は、ともにマリスト国際学校を卒業され、2人の子供は、カネディアン・アカデミーを卒業後、米国の大学に学び、現在、2人とも米国に住んでおられる。このように、神戸の外国人学校は、外国人市民の教育機関として立派な役割を果たしている。

(表2) 神戸市内外国人学校(2001年4月1日現在)

 

設立年次

設置者

所在地

カネディアン・アカデミイ

1913年

カネディアンアカデミイ

東灘区向洋町中4丁目

神戸中華同文学校

1899年

神戸中華同文学校

中央区中山手通6丁目

神戸ドイツ学院

1909年

神戸ドイツ学院

灘区曽和町1丁目

聖ミカエル国際学校

1946年

日本聖公会神戸教区

中央区中山手通3丁目

マリスト国際学校

1951年

マリスト国際学校

須磨区千守町1丁目

ルーテル国際学校

1949年

ルーテル国際学校

東灘区向洋町中4丁目

神戸朝鮮初中級学校

1945年

兵庫朝鮮学園

中央区脇浜町1丁目

西神戸朝鮮初級学校

1945年

長田区浜添通1丁目

神戸朝鮮高級学校

1949年

垂水区上高丸1丁目

(表3) 神戸市内外国人学校概要(2001年4月1日現在)

 

児童・生徒数

教職員数

使用言語

幼稚部

初等部

中等部

高等部

カネディアン・アカデミイ

106

284

165

209

764

81

英語

神戸中華同文学校

-

399

219

-

618

36

中国語

神戸ドイツ学院

14

30

0

-

44

8

ドイツ語・英語

聖ミカエル国際学校

63

64

-

-

127

9

英語

マリスト国際学校

29

99

70

59

257

15

英語

ルーテル国際学校

-

17

2

-

19

4

ノルウェー語

神戸朝鮮初中級学校

37

100

127

-

264

22

朝鮮語

西神戸朝鮮初級学校

38

98

-

-

136

13

神戸朝鮮高級学校

-

-

-

386

386

35

 (神戸市国際課調べ)

(2) 市内外国人学校の概要
 市内外国人学校9校のうち、幼稚部、初等部、中等部、高等部のすべてを持つ学校はカネディアン・アカデミイ、マリスト国際学校の2校であり、高等部のみの学校が神戸朝鮮高級学校である。
 生徒数が多い学校は、カネディアン・アカデミイ764人、神戸中華同文学校618人、神戸朝鮮高級学校386人、神戸朝鮮初中級学校264人、マリスト国際学校257人と続く。
 教職員数では、カネディアン・アカデミイ81人、神戸中華同文学校が36人、神戸朝鮮高級学校が35人、神戸朝鮮初級学校22人、マリスト国際学校15人と続いている。

(3) 市内外国人学校の教育主旨
 「兵庫県外国人学校協議会結成五周年記念誌」(2000年10月)には、各学校の教育主旨、特徴が紹介されている。以下、同記念誌、各学校発行の資料に沿って、各学校の「教育主旨」と特徴を概観してみよう。

カネディアン・アカデミイ
(Canadian Academy)
 幼稚部、初等部、中等部、高等部までを有し、教育主旨は「教育の質の高さ」で、「生徒の異なる能力や興味に対応できる体制を整え」、教師は「知識を授け指導するだけではなく、生徒のよき隣人である」ことをめざしている。また、専任のカウンセラーがいて、生徒指導に重要な役割を果たしている。

神戸中華同文学校
(Kobe Chinese School)
 初等部と中等部をもち、教育主旨は「民族教育を通して華僑子女が祖国に関する正確な知識を習得し、徳育・知育・体育の各方面にわたって発達を遂げ、中国人としての自覚を身につけ、将来日中友好事業に積極的に貢献できる人材の育成」である。「中学部卒業生のほとんどが日本の高校に進学するため、民族教育過程として中国語、中国の歴史・地理を学ぶ一方、日本の小中学校の教育課程をも習得させる、豊富な教育内容である」としている。

神戸ドイツ学院
(German School Kobe)
 幼稚部、初等部、中等部を有し、教育主旨は「効果的かつ優れた授業にふさわしい少数グループ、ドイツ式カリキュラム、学習指導プロジェクト、ドイツ語を使用」となっている。2001年から、英語使用コースの「ヨーロッパスクール」も開設した。ドイツ学校は、ドイツ人のみならず、あらゆる国籍の子弟に開放されている。

聖ミカエル国際学校
(St. Michael's International School)

 幼稚部と初等部をもち、教育主旨は「授業は英国のナショナルカリキュラム」に基づき、「地域および学校のコミュニティーなどの文化が教材として補足されて」おり、児童は「自立した志向と変化にうまく対処する能力を伸ばすよう指導」される。また、同校は、「日本聖公会の宗教法人で、キリスト教の信条と品行に重点が置かれており」、「児童が学ぶ楽しさとすべての国々の人たちと彼らの行き方を理解する手助けを目標」にしている。

マリスト国際学校
(Marist Brothers International School)

 幼稚部、初等部、中等部、高等部を有し、教育主旨は「国際社会への貢献、アメリカのカリキュラム、カトリック系、家族的精神」である。阪神大震災で壊滅的被害をうけたが、新校舎は1997年4月完成した。

ルーテル国際学園・ノルウエー学校
(Lutheran International School・The Norwegian School)

 初等部と中等部を有し、教育主旨は日本に住むノルウエー人子弟に「ノルウエーの教育」(ノルウエー国内の小中学校と同じ教育)をすることである。

西神戸朝鮮初級学校
(Nishi-Kobe Korean Primary School)
 幼稚部、初等部、中等部を有し、教育主旨は「第1に朝鮮人であることに誇りを持てる人間に育成すること、第2に、豊かな知識と能力を備えた人間に育成すること」である。

神戸朝鮮初中級学校
(Kobe Korean Primary and Junior High School)

 幼稚部、初等部を有し、教育主旨は「朝鮮人としての民族的自覚と誇りを持つ。主体性を確立して明るくてより積極的な生徒を育てる」ことであり、阪神大震災で全壊した校舎を建替え、新校舎が1997年3月に完成した。

神戸朝鮮高級学校
(Kobe Korean Senior High School)

 高等部のみ。教育主旨は「民族情緒豊かな誇り高き朝鮮人を育て同胞社会の発展と国際交流に寄与できる力を培う」ことである。

(4)兵庫県外国人学校協議会
 1995年1月17日の阪神大震災で神戸は壊滅的な被害を受けた。
 阪神間の外国人学校も大きな被害を受けたが、震災を契機に、県下19(当時)の外国人学校が結束して、1995年7月26日、「兵庫県外国人学校協議会」を発足させた。協議会の活動目的は、「兵庫県下の外国人学校間及び日本人学校との交流を深め、地域の国際化に貢献すること」、「世界に開かれたまちづくりに協力すること」である。
 協議会会長の林同春氏は、1925年生まれ、1935年来日し、神戸中華同文学校理事長、神戸華僑総会会長、神戸中華総商会会長などを歴任している。
 協議会は、1998年8月、スイス・ジュネーブで開催された国連の差別防止・少数者保護小委員会で、「外国人学校卒業生への大学入学資格検定の受験資格認定と、父兄負担の軽減のため国の補助」を訴えたことは、新聞に大きく報道された。(注)
(注)神戸新聞(1998年8月2日、9月5日)、朝日新聞(1998年9月5日等)

3.神戸市内外国人学校と地域社会
(1)外国人学校の意義 
 市内にある外国人学校は国際都市神戸にとり重要な意味を持つ。
 外国人学校の意味の第1は、神戸に住む外国人子弟の教育を担う施設として、現実に、総勢2,600人の教育を実施しているという事実である。
 第2は、外国人学校と市民の交流を通じて、市民の国際感覚を涵養し、多文化共生社会の実現に寄与することである。
 第3に、外国人学校は、教会、外国人クラブ、病院などとともに、外国人が快適に生活できるための施設であり、副次的に、その存在が外資系企業の誘致に重要な役割を果たすことである。
 神戸開港以来神戸に定着し、多くの外国人子弟を育て上げてきた外国人学校の存在は、神戸の町の重要な財産である。

(2)外国人学校の所管行政庁
 外国人学校は、学校教育法第83条の「各種学校」であり、各種学校の所管は都道府県知事である。兵庫県は、所管行政庁として、外国人学校に対し、平成13年度総額287百万円の補助金を支出している。
 神戸市は、制度上は外国人学校の所管行政庁ではないが、外国人学校の重要性にかんがみ、阪神大震災から復興途上の厳しい財政環境の中で、兵庫県補助に上乗せする形で、独自の財政的支援をしており、平成13年度は48百万円を助成している。

4.神戸市内外国人学校の課題
 長い歴史を持つ神戸の外国人学校ではあるが、課題も少なくない。
 課題の第1は、経営の安定である。阪神大震災で壊滅的な被害を受けた外国人学校は、校舎立替、施設修復などに巨額の資金を投下することを余儀なくされた。復旧のため、兵庫県、神戸市の支援や、父兄の寄付などを集め、教職員の献身的な努力で、施設はほぼ震災前の水準に戻ったが、復旧のための投資が学校経営を圧迫しているおり、学校の経営安定、経営改善が課題となっている。県、市は厳しい財政状況にもかかわらず、毎年外国人学校に財政援助をしている。
 第2の課題は、地域社会との融和、調和をさらに拡充していくことである。市民への学校開放、市内の日本人学校との交流などをさらに深め、真に、神戸市内の学校としての存在を市民に広く認識してもらい、多文化共生社会の実現に寄与することである。
 21世紀に入って、はや1年余が過ぎ、阪神大震災で大きな被害を受けた神戸の町もインフラはほぼ復興し、矢田新市長は2005年を、完全復興目標年とする旨表明している。  
 現在、医療産業都市構想を推進している神戸市は、建設中の神戸空港に隣接したポートアイランド2期を中心に、「先端医療センター」、「発生・再生科学総合研究センター」、「メディカルビジネスサポートセンター」等を核として、外資系企業の誘致を積極的に進めている。
 外資系企業が立地するためには、企業の経営者、従業員など外国人が住みやすい環境をつくる必要があるが、外国人学校は、既に神戸市内にある外国人クラブ、教会、外国人向け病院などとともに、その重要性は今後ますます高まっていくと考える。
 130余年前の神戸開港以来、この町に培われてきた国際性をますます高めていくため、いま、神戸の外国人学校が注目を浴びている。
(文中意見にわたる部分は、筆者の私見である。)

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